東京高等裁判所 昭和28年(ラ)367号 決定
案ずるに不動産の強制競売手続においては、民事訴訟法第六百八十六条により競落許可決定の言渡により競売の目的である不動産の所有権は競落人に移転するけれども、その後に至り右競落許可決定が抗告審において取消されるか、または競落人において競落代金の支払をなさないため再競売が命ぜられた場合には、遡つて不動産所有権の移転がなかつたことに帰するのであるから、競落許可決定による右所有権移転の効力は、競落代金の支払あることを解除条件として生ずるものと解すべきである。而して本件不動産強制競売手続においては、その競落許可決定言渡の日の翌日に債務者から請求異議の訴に基く強制執行停止決定の正本が原審裁判所に提出されたため、同裁判所においては爾後の手続の続行が許されなくなり、従て競落許可決定確定後も競落人に対し競落代金支払期日を定めてその支払を命じえない状態におかれるに至つたところ、その後債権者債務者間の請求異議の訴訟において債務全部を消滅せしめる趣旨の和解が成立し、これにより本件強制競売の基本たる債務名義の執行力は排除せられるに至つたことは記録上明である。(債権者代理人の競売申立取下書もこのことを表示したものと解すべきである。)右事実によれば、本件強制競売手続における競落人は競落代金の支払をなすをえず、従て右競売の目的たる不動産所有権を取得することをえないまま右競売手続の終了を見るに至つたものというべきである。それのみならず、今なお競売手続が終了しないとしても、本件では、原裁判所は債権者の右競売申立の取下を有効のものと解し、執行力ある債務名義正本を債権者に返付し、競売申立の登記抹消の嘱託をなし、右登記は抹消されてしまつたことが記録上明らかである。そして執行力ある右正本が執行裁判所に提出せられ、執行裁判所がこれを保持していることは執行手続の開始及び続行の要件であるのに、右のとおり執行裁判所は、執行力ある正本を債権者に返付し現にこれを保持していないのであるから、この点からみても、執行手続の続行である競落代金支払期日の指定はなしえないものといわなければならない。しからば競落人たる抗告人からその後になされた競落代金支払期日指定の申立は理由がないからこれを排斥した原決定は結局相当であつて本件抗告は理由がない。